足のしびれがひどくて、歩くのがつらくなっている方は少なくありません。買い物の途中で足が止まってしまう、散歩に出るのがおっくうになった、そんな経験が続くと生活そのものに支障が出てきます。
足のしびれで歩けなくなる原因には、腰の骨や神経の問題、血管の病気、糖尿病による末梢神経の障害など複数の可能性が考えられます。原因によって治療の進め方が変わるため、自分の症状がどれにあてはまるのかを知ることが改善への第一歩となるでしょう。
この記事では、足のしびれで歩けないときに考えられる原因と、症状から原因を見分ける方法、自分でできる対処法、受診の目安までをまとめています。
足のしびれで歩けないときに考えられる主な原因
足のしびれで歩行が困難になる場合、大きく分けて以下の3つが原因として考えられます。
- 神経の圧迫
- 血管の病気
- 末梢神経の障害
どれも放置すると症状が進行する可能性があるため、まずはそれぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
中高年以降に多い腰部脊柱管狭窄症はその代表格ですが、血管に原因がある閉塞性動脈硬化症や、糖尿病に伴う神経障害でも似たような症状が起こり得ます。
原因によって受診すべき診療科も異なるため、以下で詳しく見ていきましょう。
腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなど神経が圧迫されている場合
足のしびれで歩けなくなる原因として多いのが、腰の部分で神経が圧迫されるケースです。なかでも腰部脊柱管狭窄症は、中高年に多い代表的な疾患で、推定患者数は国内で約580万人にのぼるとされています。
参考:腰痛の診断、治療に関する研究「腰部脊柱管狭窄症の診断・治療法の開発」|厚生労働省研究成果データベース
- 腰部脊柱管狭窄症
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腰部脊柱管狭窄症とは
脊柱管とは、背骨の中を神経が通るトンネルのような空間です。加齢によって骨が変形したり、椎間板が膨らんだり、靱帯が厚くなったりすると、この空間が狭まります。
結果として中の神経が圧迫され、お尻から足にかけてしびれや痛みが出てくるのがこの病気の仕組みです。
症状 歩いているときや立っているときに足やお尻に痛み・しびれが生じる
長時間連続して歩くことが難しくなるとされています。症状の緩和 しばらく休んだり前かがみでしゃがんだりすると症状が和らぐのが特徴的 見分けるヒント 自転車をこぐときには痛みが出にくい点 - 腰椎椎間板ヘルニア
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腰椎椎間板ヘルニアでは、椎間板の中にある髄核が飛び出して神経を圧迫します。
脊柱管狭窄症との違い- 若い世代でも発症する可能性がある
- 前かがみの姿勢で症状が悪化しやすい
腰からくる神経の圧迫による症状は、生活習慣の見直しやリハビリなどを含めた保存的な対応が検討されることも多く、医師の判断のもとで経過をみていくケースもあります。
いずれにしても、足のしびれが続く場合には整形外科で状況を確認することがひとつの選択肢になります。
閉塞性動脈硬化症など血管の病気が関係している場合
神経だけでなく、足の血管が原因でしびれや歩行困難が生じるケースもあります。その代表的な病気が閉塞性動脈硬化症です。
閉塞性動脈硬化症は、足の動脈に動脈硬化が進行して血管が狭くなったり詰まったりすることで、足先への血流が不足する病気です。
症状は以下の4段階に分けられます。
- I度
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冷感やしびれ感
- II度
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間欠性跛行(歩くとふくらはぎなどが痛くなり、休むと治まる)
- III度
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安静時痛(じっとしていても痛む)
- IV度
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潰瘍や壊死
この病気は高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙といった生活習慣病と深い関わりがあります。動脈硬化は全身の血管で同時に進む可能性があるため、閉塞性動脈硬化症を持つ方は狭心症や脳梗塞のリスクも高い傾向にあるとされています。
腰部脊柱管狭窄症と同様に「歩くと痛くて休むと楽になる」という間欠性跛行が起こるため、両者は混同されやすい病気です。ただし、血管が原因の場合は「立ち止まるだけで痛みが引く」ことが多く、姿勢を変える必要がある脊柱管狭窄症とは異なるとされています。
足の甲で脈が触れにくい、足先が冷たいといった兆候がある場合は、血管外科や循環器内科への相談が検討されることもあります。
糖尿病やビタミン不足による末梢神経の障害
足のしびれが両足にじわじわと広がるような場合、糖尿病やビタミン不足による末梢神経の障害が関係している可能性があります。
厚生労働省の令和5年(2023年)患者調査によると、糖尿病で治療を受けている患者の総数は約552万人にのぼります。
- 糖尿病
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糖尿病性神経障害は糖尿病の合併症のなかで最も多いもののひとつで、高血糖の状態が長く続くことで末梢神経がダメージを受けて発症します。
糖尿病性神経障害とは高血糖の持続により全身の神経がダメージを受ける糖尿病の「三大合併症」の一つです。主に手足のしびれ・痛み(感覚神経)や、便秘・立ちくらみ・排尿障害(自律神経)を引き起こし、進行すると足の壊疽(えそ)や突然死の危険もあるため、早期の血糖管理が不可欠です。
初期には足の指先や足裏にピリピリ、ジンジンといったしびれを感じ、進行すると感覚が鈍くなって傷に気づかないこともあるため注意が必要です。
- ビタミン不足
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ビタミンB群の不足も末梢神経の障害を引き起こす原因となり得ます。なかでもビタミンB12は、末梢神経の機能維持や修復に関わる栄養素です。
ビタミンB12とは健康な赤血球を形成し、神経細胞を正常に保つために不可欠な水溶性ビタミンです。不足すると巨赤芽球性貧血(悪性貧血)や手足のしびれ、慢性疲労を引き起こす。「赤いビタミン」とも呼ばれ、主にレバー、魚介類、肉などの動物性食品に含まれる。
偏った食生活を続けている方や、胃の切除手術を受けた方は吸収が低下しやすく、ビタミンB12欠乏による手足のしびれが起こることがあるとされています。
神経障害によるしびれは、圧迫が原因のしびれとは異なり、じっとしていても症状が持続するのがひとつの目安です。両足に対称的にしびれが広がっている場合は、早めに内科や糖尿病外来で血液検査を受けることをおすすめします。
足のしびれの症状から原因を見分けるポイント
足のしびれといっても、症状の出方は人によってさまざまです。「いつしびれるか」「どうすると楽になるか」に注目することで、原因をある程度絞り込むことが可能です。
ただし、複数の原因が重なっていることもあるため、自己判断だけで済ませず、医師の診察を受けることが大切です。
歩くとしびれが出て休むと楽になる場合
しばらく歩くと足にしびれや痛みが出て、休憩すると治まって、また歩けるようになる症状は、間欠性跛行と呼ばれ、腰部脊柱管狭窄症と閉塞性動脈硬化症の両方で見られます。
しばらく歩くと足(ふくらはぎ、太もも、お尻など)に痛みやしびれが出て歩けなくなり、休むとまた歩けるようになる症状。歩く→痛む→休む→改善のサイクルを繰り返し、放置すると歩行可能距離が短くなる。主に血管性(動脈硬化)と神経性(腰部脊柱管狭窄症)の2つの原因が考えられる。
ここで注目したいのが「どのように休むと楽になるか」です。
腰部脊柱管狭窄症と閉塞性動脈硬化症の違い
| 腰部脊柱管狭窄症 | 前かがみになると背骨の神経の通り道(脊柱管)が少し広がり、神経への圧迫が緩むため、症状が和らぐことがある 例)ショッピングカートを押しながらなら歩ける、自転車も問題なくこげる、など |
|---|---|
| 閉塞性動脈硬化症 | 姿勢を変えなくても立ち止まるだけで数分以内に痛みが軽くなることがある 痛みはふくらはぎに集中することが多く、足先が冷たく感じたり、足の甲の脈が弱くなったりする |
こうした違いを把握しておくと、受診時に医師に症状を伝える際に役立ちます。
じっとしていてもしびれや痛みが続く場合
安静にしていても足のしびれや痛みが治まらない場合は注意が必要です。
- 腰部脊柱管狭窄症
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腰部脊柱管狭窄症が進行すると、歩行時だけでなく安静時にもしびれや痛みが出ることがあります。症状は日中の活動時に出やすく、横になっている間は比較的楽になる傾向がありますが、症状が重くなると、寝ていても足にしびれを感じることがあります。
- 閉塞性動脈硬化症
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III度(安静時痛)に進行すると、歩いていなくても足に刺すような痛みが続くようになります。この段階では皮膚の色が変わったり、傷が治りにくくなったりすることもあるため、早急に血管外科を受診したほうがよいでしょう。
- 糖尿病性神経障害
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安静や活動に関係なく足先のしびれが続くことがあります。靴下を履いているような感覚の鈍さを覚える方もおり、こうした症状が数週間以上続く場合は、医療機関で原因を確認することが勧められます。
足のしびれで歩けないときに自分でできる対処法
足のしびれの原因が明らかになっていない段階でも、日常生活で取り入れられる工夫はあります。
ただし、しびれが急に強くなった場合や、力が入りにくい・歩行が困難といった症状が続く場合には、自己判断だけで対処せず医療機関を受診することが前提です。
ここでは、医師の診察を受けながら生活の中で取り入れやすいセルフケアを紹介します。症状の出方には個人差があるため、無理のない範囲で行うことが大切です。
腰やお尻まわりのストレッチで筋肉をほぐす
神経の圧迫が原因のしびれには、腰まわりの筋肉をやわらかくするストレッチが役立つ場合があります。
- 腰部脊柱管狭窄症
- 椎間板ヘルニアなど
腰が強く反る姿勢、いわゆる反り腰の姿勢になっていると脊柱管がいっそう狭くなり、神経への圧迫が強まりやすくなります。そこで、腰を丸める方向のストレッチで脊柱管のスペースを広げてあげることがポイントです。
- 膝かかえ体操
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腰部脊柱管狭窄症の方は、運動法の一つとして、神経の圧迫を和らげる「膝かかえ体操」がおすすめです。
膝かかえ体操の手順- 仰向けに寝て、片膝を曲げる
- 両手で膝を抱え、体の方へ引き寄せる(気持ちいいと感じるのが目安)
- 30秒間キープする
- 左右5回ずつ程度を繰り返す
これを1日3回を目安に、2週間ほど続けることが勧められています。
- 梨状筋ストレッチ
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また、お尻の奥にある梨状筋という筋肉が硬くなることで、坐骨神経に負担がかかるケースもあります。このような場合には「梨状筋ストレッチ」も試してみてください。
梨状筋ストレッチの手順- 椅子に浅く腰かける
- 片方の脚(例:右)の外くるぶしを、反対側の膝(左)の上に乗せる
- 背筋を伸ばしたまま、上半身をゆっくり前に倒していく
- その姿勢で深呼吸しながら、20〜30秒お尻を伸ばす
ストレッチは、継続すると体の感覚が少しずつ変わる人もいます。急がず続けることが大事ですが、痛みやしびれが強くならない範囲で行うことが基本です。違和感が強くなる場合には中止し、整形外科などで相談しましょう。
前かがみの姿勢や歩き方を工夫する
腰部脊柱管狭窄症が痛みの原因の場合、姿勢をほんの少し前傾させるだけで、歩ける距離が伸びることがあります。
- 杖やシルバーカーを使い、少し前傾の姿勢で歩く
- 買い物のときはカートを押して歩く
- 自転車で移動する
- 長時間歩くときはこまめにベンチに座って休憩をはさむ
こうした姿勢の工夫は、脊柱管狭窄症の保存療法として整形外科でも指導されるものです。無理に背筋を伸ばそうとするより、体が楽に感じる姿勢を見つけることが大切です。
なお、症状の出方には個人差があり、同じ姿勢でも楽に感じる人とそうでない人がいます。自分の体の感覚を目安に、無理のない範囲で調整していくとよいでしょう。
血行を促すための冷え対策と生活習慣の見直し
- 冷え対策
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足の冷えや血行不良は、しびれの悪化要因になり得ます。とくに閉塞性動脈硬化症では、足が冷えると血管が収縮して血流がさらに低下するため、足元を冷やさないようにする工夫が欠かせません。
靴下や電気毛布を使った保温や、入浴も血行改善に役立つとされています。
ただし、電気あんかや湯たんぽは低温やけどつながる可能性があるため、足に直接当てないよう注意が必要です。とくに糖尿病の方は、足の感覚が鈍くなっていることがあり、やけどに気づきにくいので気をつけてください。
- 生活習慣の見直し
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- 喫煙
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生活習慣の面では、禁煙が血管の健康にとって大きな意味を持ちます。喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を促進する要因です。
- 食事面
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また、食事面ではビタミンB群を含む食品(豚肉、レバー、魚介類、卵など)を意識的に取り入れることで、末梢神経の健康維持に役立つと考えられています。
- 歩行
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適度な歩行も血行改善に有効とされていますが、痛みやしびれが強くなるまで無理に歩き続ける必要はありません。痛みが出る手前で休みながら歩く、といったペース調整が大切です。
足のしびれが長引くときの治療の選択肢と受診の目安
足のしびれが続くと、「そのうち治るだろう」と様子を見てしまう人も少なくありません。ただ、以下のような変化が見られる場合は、医療機関で原因を確認することが検討されます。
- 2週間以上しびれが続く
- 歩ける距離が以前より短くなっている
- 安静にしていても痛みや違和感がある、など
足のしびれは、腰の神経、血管、代謝疾患など、複数の要因が関係することがあります。そのため自己判断だけで対処するより、医師の診察を受けて原因に応じた対応を考えることが重要になります。
ここでは、一般的に行われる治療の考え方と、受診先の目安について解説します。
薬やリハビリなど保存的な治療の進め方
足のしびれの原因が特定された場合、まずは手術以外の保存的治療から始めるのが一般的です。
- 腰部脊柱管狭窄症
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腰部脊柱管狭窄症の治療例
- 鎮痛薬(非ステロイド性消炎鎮痛薬など)で痛みを抑えつつ、血流改善薬で神経への血行を促す薬剤を処方
- 痛みが強い場合には、局所麻酔薬を注入する硬膜外ブロック注射が用いられる
- 並行して、腰まわりの筋力を維持するための運動療法やリハビリが行われる
症状が軽度から中等度の方のうち約60%は保存療法でも軽快したという報告があります。以下の場合には手術が検討されることもあります。
- 保存療法を3カ月程度続けても改善しない場合
- 排尿障害や足の筋力低下が出てきた場合
- 閉塞性動脈硬化症
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閉塞性動脈硬化症の基本治療
禁煙や運動療法、血糖・血圧・コレステロールの管理といった、生活習慣の見直しが治療の基本とされています。
国立循環器病研究センターでは、痛みが出る手前で休みながら繰り返し歩く運動療法が推奨されており、使われていなかった細い血管の血流を増やす効果が期待されるとしています。
- 糖尿病性神経障害
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糖尿病性神経障害の基本治療
糖尿病性神経障害が関係する場合には、血糖値の管理が治療の基礎になります。
程度に応じて、医師の判断のもとでビタミンB12製剤(メコバラミンなど)が処方されることもあります。こうした薬の使用は個々の状態によって異なるため、自己判断での使用は避けることが大切です。
整形外科や血管外科など症状に合った診療科の選び方
足のしびれがあるとき、「どの診療科を受診すればいいのか分からない」と迷う人は少なくありません。原因によって適した診療科が変わることがあるため、症状の特徴を目安に受診先を考えるとスムーズです。
- 整形外科が適しているケース
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整形外科に適した症状
- 歩くと足がしびれて前かがみで休むと楽になる
- 腰痛がある
- お尻から足にかけて痛みが広がる、など
腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなど、脊椎に関連する疾患が疑われることがあります。脊椎専門外来やリハビリ体制が整った医療機関では、診断からリハビリまで一貫して対応してもらえます。
- 血管外科・循環器内科が適しているケース
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血管外科・循環器内科に適した症状
- 足先が冷たい
- 皮膚の色が変化している
- 歩くとふくらはぎが痛くなり、立ち止まると落ち着く、など
血管の状態が関係している可能性も考えられます。例えば、閉塞性動脈硬化症が疑われる場合には、ABI検査と呼ばれる、足と腕の血圧を比較する検査などが行われることがあります。
- 血管外科・循環器内科が適しているケース
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血管外科・循環器内科に適した症状
- 両足の指先が常にしびれている
- 触れた感覚が以前より鈍いと感じる、など
末梢神経の状態や代謝の異常が関係している可能性もあります。糖尿病の既往がある場合には、経障害が背景にあることもあるため、血液検査によって血糖値の状態や栄養状態などを確認することがあります。
結果に応じて、生活習慣の見直しや治療方針が検討される流れになります。
どの診療科を受診するべきか判断に迷ったときは、かかりつけ医に相談して適切な専門医を紹介してもらうのがよいでしょう。
足のしびれは、年齢とともに増える症状の一つではあります。ただ、「年齢のせい」と決めつけて放置してしまうと、生活の質に影響する可能性もあります。
原因を確認するだけでも安心につながることがあるので、気になる症状が続くときは一度相談してみるとよいでしょう。
