股関節が痛くて歩けない原因は?放置が危険な理由と対処法

股関節が痛くて歩けない原因は?放置が危険な理由と対処法

歩くたびに足の付け根がずきっと痛んだり、朝の立ち上がりで思わず顔をしかめてしまったりする

そんな股関節の痛みに悩む方は、決して珍しくありません。とくに40代以降の家族が「最近、歩くのがつらい」と口にし始めると、何か病気が隠れているのではないかと心配になるものです。

股関節の痛みで歩きにくくなる背景には、変形性股関節症や大腿骨頭壊死症、関節リウマチなど、いくつかの疾患が関わっている場合があります。痛みをそのままにしていると、日常生活での動きがさらに制限される可能性もあります。

この記事では、股関節の痛みが起こる主な原因をはじめ、放置した場合に考えられる影響、日常生活での対処の考え方、医療機関を受診する目安について整理しています。

目次

股関節が痛くて歩けないときに考えられる原因

股関節が痛くて歩くのがつらいと、「年齢のせいかもしれない」と考えてしまう方も多いかもしれません。

しかし、股関節の痛みには加齢による変化だけでなく、いくつかの病気が関係していることもあります。

原因によって治療法が異なるため、どんな病気の可能性があるのかを知っておくことが受診への第一歩になります。

変形性股関節症による軟骨のすり減り

股関節の痛みで病院を受診する人の中で、比較的多くみられるのが変形性股関節症です。

変形性股関節症とは

股関節の中でクッションの役割をしている軟骨が長い年月をかけてすり減ることで、関節に変形が起こり、痛みが出てくる状態を指します。

日本整形外科学会によると、原因の多くは「発育性股関節形成不全」など、生まれつきの骨の形が関係しているとされています。

女性は男性より発症する割合が高く、40〜50代で症状が出始めるケースが多いとされています。初期には、歩き始めや立ち上がるときにだけ痛みを感じる程度ですが、進行すると安静時にも痛みが続くことがあります。

大腿骨頭壊死や関節リウマチなどの病気

変形性股関節症以外にも、股関節に強い痛みを引き起こす病気があります。代表的なものが、大腿骨頭壊死症と関節リウマチです。

大腿骨頭壊死症とは

大腿骨頭への血流が血流が悪くなり、骨の組織が壊れていく病気です。

初期にはほとんど自覚症状がないこともありますが、骨が体重を支えられなくなると、強い痛みが出て歩くのが難しくなります。厚生労働省の指定難病にも含まれている疾患です。 

関節リウマチとは

免疫の働きに異常が生じ、関節に炎症が起こる病気です。手や指の症状がよく知られていますが、股関節に症状が出ることもあります。

足の付け根にこわばりや痛みがあるときは、関節リウマチの可能性も考えて検査を受けることが検討されます。

股関節の痛みを放置するとどうなるのか

股関節の痛みがあっても、「しばらく様子を見よう」と我慢してしまう方は少なくありません。

ただ、痛みを抱えたまま生活を続けていると、症状そのものが進んだり、別の部位に負担がかかったりする場合があります。

ここでは、股関節の痛みを放置した場合に起こりうる代表的な影響について紹介します。

軟骨の損傷が進み歩行がさらに困難になる場合がある

変形性股関節症は、症状の進み具合によって「前期」「初期」「進行期」「末期」の4つの段階に分けて説明されることがあります。

進行期と呼ばれる段階になると、関節のクッションである軟骨が部分的に失われ、骨同士が接触しはじめます。末期には広範囲にわたって軟骨が失われ、骨棘(こつきょく)と呼ばれる突起が形成されることもあります。

こうした変化がみられると、歩くこと自体が負担になったり、動いていないときにも違和感や痛みを感じたりするケースがあります。中には、寝返りの動作で目が覚めると感じる方もいるようです。

一般に、すり減った軟骨が自然に元の状態へ戻ることはないとされています。「まだ歩けるから」と受診を先延ばしにすることで、医療機関で検討される対応の選択肢が変わってくる場合もあります。

かばう動きが膝や腰にも負担をかける

股関節に痛みがあると、本人が意識しないうちに、痛みを避けるような歩き方になることがあります。たとえば、痛む側に体重をかけないようにし、反対側の足で支える動きが続くと、腰への負担が少しずつ大きくなっていきます。

股関節の不調によって左右の脚の長さに差が出たり、かばう動作が習慣化したりすると、膝の動きや位置関係に影響が及ぶこともあります。

その結果、膝に余計な負担がかかり、後になって膝の関節に変化がみられるケースが報告されています。

このように、股関節の痛みを放置すると、影響が股関節だけにとどまらない可能性がある点にも注意が必要です。

痛みがあるときの対処法と避けるべき動作

股関節に痛みがあると、「できるだけ動かさないほうがいいのでは」と考える方もいれば、「動かさないと固まってしまいそう」と無理に体を動かす方もいるかもしれません。

どちらか一方に偏るのではなく、その時の痛みの状態に合わせて負担を減らす工夫を取り入れることが大切です。

安静や体重管理など日常生活での工夫

股関節に痛みがあるときは、まず関節にかかる負担を減らすことを意識しましょう。

歩くとき、股関節には体重の数倍の力がかかるとされており、体重が増えるほど負担も大きくなります。食べ過ぎに注意し、栄養バランスを考えた食生活を心がけることは、日常でできる対処のひとつです。

生活様式を見直すことも助けになります。床に座る生活から、椅子やベッドを使う生活に変えるだけでも、立ち座りの際の股関節への負担は軽くなります。和式トイレを洋式に替えるのも、関節への負荷を減らす工夫のひとつです。

歩くときに痛みが強い場合は、杖を使うことで体重の一部を分散できます。痛む側と反対の手で持つと、股関節への負担が軽くなりやすいとされています。

また、水中歩行は浮力によって体重が支えられるため、痛みがある方でも比較的取り組みやすい運動です。ただし、運動の内容や量によっては痛みが強まることもあるため、始める前に医師へ相談すると安心です。

股関節に負担をかける姿勢や動きに注意

痛みがあるときには、無意識に行っている動作にも注意が必要です。深くしゃがみ込む動作は、股関節に大きな力がかかるため、できるだけ控えたほうがよいでしょう。

あぐらや正座のように関節を強く曲げたりひねったりする姿勢も、長時間続けると痛みが出やすくなります。床に座る場合は、椅子に座る、足を伸ばすなど、負担の少ない姿勢を選ぶ工夫が必要です。

ランニングやジャンプなどの強い衝撃を伴う運動は、股関節に大きな負荷がかかるとされています。痛みがある時期に続けると、症状が悪化する可能性があるため注意しましょう。

片足に体重をかけて立つ癖がある方も少なくありませんが、この姿勢では股関節への負担が集中しやすくなります。立つときは、両足に均等に体重をかけることを意識するとよいでしょう。

重い荷物を持つ場面では無理をせず、キャリーカートなどを活用するのも一つの方法です。

早めに整形外科を受診すべき痛みの目安

股関節に痛みがあっても、すべてがすぐに病院受診を必要とするわけではありません。ただし、痛みのために日常生活に支障が出はじめた場合は、整形外科の受診を検討することが大切です。

症状をそのままにしていると、体への負担が増え、結果的に治療の選択肢が限られてしまうこともあります。

放置せず受診を考えたい症状の目安

次のような状態がみられる場合は、早めに医療機関で相談することがすすめられます。

歩きはじめや立ち上がるたびに、足の付け根(鼠径部)に痛みを感じる場合、股関節の不調が関係している可能性があります。こうした痛みが2週間以上続く場合は、一時的な疲労や炎症ではなく、関節自体の問題が関わっていることも考えられます。

また、靴下を履きにくい、爪切りがしづらいといった変化は、股関節の動く範囲が狭くなり始めているサインのひとつです。夜間や安静にしているときにも痛みがある場合は、症状が進んでいる可能性も否定できません。

なお、痛みが出る場所は足の付け根に限らず、太ももやお尻、場合によっては膝に違和感として現れることがあります。膝を調べても異常が見つからず、詳しく調べた結果、股関節が原因だったというケースもあります。

痛みの場所だけで判断せず、広い視点で考えることが重要です。

医療機関で行われる検査と治療の流れ

整形外科では、まず問診や診察を通して、痛みの出る場所や強さ、関節の動き、歩き方、左右の脚の長さなどを確認します。画像検査としてはレントゲン検査が基本となり、関節のすき間や骨の形の変化などを確認します。

必要に応じて、CTやMRIなどの検査を行い、別の病気が疑われる場合には血液検査が加えられることもあります。治療は、大きく分けて保存的な方法と手術を含む方法があります。

保存的な対応では、生活上の注意点の説明や体重管理、杖の使用、医師の判断による薬の処方、股関節周囲の筋力を保つための運動指導などを組み合わせて行います。

こうした対応で十分な改善が得られない場合には、状態に応じて手術が検討されることもあります。関節の状態や年齢、生活背景によって選択肢は異なるため、どの治療が適しているかは専門医と相談しながら決めていくことが大切です。