変形性膝関節症は手術なしで治せる?最新の治療法を解説

変形性膝関節症は手術なしで治せる?最新の治療法を解説

膝の痛みが続き、「手術以外の方法はないのか」と情報を調べている方も少なくありません。変形性膝関節症では、症状の進み具合によっては、手術以外の治療が選択される場合もあります。

この記事では、保存療法から再生医療まで、現在行われている手術以外の治療について、症状の段階ごとに整理して紹介します。

ご自身の状態に合う治療を考える際の参考情報としてご覧ください。

目次

変形性膝関節症は放置すると症状が進行する病気である

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることで痛みや動きにくさが生じる病気です。膝の違和感が軽いと、「少し様子を見よう」と考える方も少なくありません。

ただし、状態によっては、時間の経過とともに膝の症状が強くなる場合があります。

保存療法が治療の第一選択とされることが多い理由

変形性膝関節症の治療では、手術を行わない方法から検討されることが一般的です。この方法は保存療法と呼ばれています。

保存療法の例
  • リハビリテーション
  • 薬物療法
  • 注射療法
  • 装具療法
  • 生活習慣の見直し、など

手術と比べて体への負担が比較的少ないとされており、治療の選択肢の一つとして検討されることがあります。ただし、保存療法によってすり減った軟骨や変形した骨が元の状態に戻るわけではありません。

多くの場合、膝の痛みを軽減することや、膝への負担を減らしながら日常生活を送りやすくすることを目的に行われます。

症状の進行を遅らせるために早めの対処が重要とされる背景

膝関節には、歩行時で体重の約2~3倍、階段昇降時には約3倍前後の負荷がかかると報告されています。肥満や筋力の低下があると、この負荷がさらに大きくなります。

初期から中期の段階であれば、保存療法によって痛みが改善したり、症状が落ち着いた状態(寛解)に至ることもあります。一方、症状が進行して関節の変形が著しくなると、保存療法の効果が出づらくなり、手術を選ばざるを得ない状況になることがあります。

膝に違和感や痛みを感じ始めた段階で整形外科を受診し、現状の把握と対処法を医師と相談することが、長い目で見た予防にもつながります。

変形性膝関節症における手術以外の保存療法の種類

変形性膝関節症の保存療法は、単独で使われることもありますが、複数の方法を組み合わせて進めることが一般的です。

どの治療が合うかは症状の程度や生活スタイルによって異なるため、まずは整形外科で診断を受けたうえで、医師と相談しながら決めていくことが前提となります。

薬物療法と注射で膝の痛みや炎症に対応する方法

薬物療法とは

抗がん剤、分子標的薬、ホルモン剤などの薬剤を用いて、がん細胞を殺傷したり増殖を抑えたりする全身的な治療法です。

膝の痛みや炎症に対して薬を用います。変形性膝関節症そのものを治す治療ではありませんが、痛みが軽くなることで日常生活を送りやすくなり、運動療法などのリハビリに取り組みやすくなる場合があります。

内服薬

非ステロイド性抗炎症薬が処方されることがあります。湿布や塗り薬などの外用薬と併用される場合もあります。

注射

関節内への注射としては、ヒアルロン酸製剤が使用されることがあります。

変形性膝関節症では、関節内の滑液に含まれるヒアルロン酸の量や粘り気が低下する場合があります。ヒアルロン酸を補充することで関節の動きを助ける目的で用いられます。

ステロイド薬

炎症が強い場合には、ステロイド薬の関節内注射が検討されることもあります。使用の可否や回数は、関節の状態を確認したうえで医師が判断します。

運動療法で膝を支える筋力を維持する取り組み

運動療法とは

病気やけがの治療・予防、機能回復を目的に、計画的に身体を動かす医療行為です。

運動療法は、保存療法のなかで重要な方法のひとつとされています。

膝関節を直接支える太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)を中心に鍛えることで、膝への負担を軽減することが期待されています。

リハビリで行われる運動
大腿四頭筋の筋力トレーニング

椅子に座った状態で足をゆっくり持ち上げる運動など

ストレッチ

膝の周囲の柔軟性を保つための関節可動域訓練

有酸素運動

水中ウォーキング、ウォーキング、水泳(平泳ぎを除く)

水中ウォーキングは浮力によって体重の負荷が軽くなるため、膝への負担が比較的少ない運動です。

一方、しゃがみ込みや膝を深く曲げる動作は膝関節への負担が大きくなる場合があるため注意が必要です。

温熱療法や電気刺激で症状に対応する物理療法

物理療法とは

電気、温熱、超音波、光、水、牽引などの物理的なエネルギーを用いて、身体の痛みや血流障害、筋肉の緊張を緩和するリハビリテーションの一種です。主に整形外科や理学療法士が在籍するリハビリ施設で行われます。

物理療法は、薬物療法や運動療法と併用されることが多い方法です。単独で病気を改善する治療ではありません。

代表的な物理療法
温熱療法

ホットパックや超音波を使用して患部を温め、血流を促進して筋肉のこわばりをほぐす

膝の周囲の柔軟性を保つた電気刺激療法(TENS)

低周波電気で神経に刺激を与え、痛みの伝達を抑えるめの関節可動域訓練

超音波療法

超音波の振動を利用して、組織の深部に刺激を与える

症状の程度や体調によって適した方法は異なります。実施するかどうかは、医師や理学療法士と相談しながら決めることが大切です。

装具や日常動作の見直しで膝への負担を減らす方法

装具療法とは

腰痛や膝痛、骨折、脳卒中後の麻痺などに対し、コルセット、サポーター、インソール(足底板)などの装具を装着し、患部の固定・保護、変形の矯正、身体機能の補助を行う治療法です。

装具療法は、膝関節の安定を保ち、関節にかかる負担を調整する目的で行われます。

日本人の場合、膝の内側の軟骨がすり減りやすくO脚になるケースが多いとされています。外側が高くなった形状のインソールを靴に入れることで、膝にかかる荷重のバランスを調整する方法が用いられることがあります。

膝用サポーターは、関節の安定を補助する目的で使用される場合があります。

自己判断で装具を選ぶと合わないものを使い続けてしまうこともあるため、担当医や理学療法士に相談して選ぶことが望ましいです。

日常動作の見直しも重要

たとえば、しゃがみ込み・正座・重い荷物を持ったままの階段昇降などは、膝関節への負担が大きい動作とされています。

こうした動作を減らし、膝に優しい立ち上がり方や歩き方を身につけることが、症状の進行を遅らせることにつながるとされています。

保存療法で十分な変化がみられない場合に検討される治療の選択肢

保存療法を続けても膝の痛みや動きにくさが続く場合、従来は保存療法の次の段階として手術療法が選択されるケースが多くありました。

近年では、保存療法と手術療法の中間に位置づけられる治療として再生医療を取り入れる医療機関もみられます。

以下では、再生医療の主な種類と特徴について説明します。

保存療法と手術の間を補う治療として再生医療が注目されている背景

変形性膝関節症の保存療法だけでは、日常生活の負担が十分に軽減されない場合もあります。しかし、関節の状態や体調によっては手術を選択しない人もいます。

手術を選択しない理由
  • 高齢
  • 持病
  • 手術後の入院やリハビリ期間が生活に影響する、など

日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」では、変形性膝関節症で痛みや腫れなどの症状がある人は国内で約800万人と推定されています。また、症状がある人は要介護状態へ移行する可能性が高くなることも指摘されています。

このような背景から、保存療法と手術療法の間に位置づけられる治療として、再生医療を提供する医療機関が増えてきています。

血液を使ったPRP療法・APS療法とはどのような治療か

PRP療法とAPS療法は、患者自身の血液から抽出した成分を膝関節に注射する治療法です。いずれも自分の血液を使うため、アレルギー反応や拒絶反応が起きにくいとされています。

PRP療法(多血小板血漿療法)

採取した血液を遠心分離して血小板を多く含む成分(PRP)を抽出し、膝関節内に注射する方法です。

APS療法(自己タンパク質溶液療法)

PRPをさらに処理し、タンパク質成分を濃縮した溶液(APS)を利用する方法です。PRPとは成分構成が異なり、関節の炎症に関係するタンパク質を多く含むとされています。

2026年現在、PRP療法・APS療法はいずれも保険診療の対象外であり、自費診療となります。

また、これらの治療は再生医療等安全性確保法に基づき、厚生労働省への届け出が受理された医療機関でのみ提供できると定められています。

治療を検討する場合は、医療機関が「再生医療等提供機関」として登録されているかどうかを事前に確認することが重要です。

幹細胞を用いた治療との違いと対象となる状態

幹細胞を用いた治療も再生医療の一つであり、PRP療法やAPS療法とは使用する細胞や成分が異なります。

PRP療法・APS療法血液中の成分を利用する方法
幹細胞治療患者自身の脂肪組織から幹細胞を取り出し、培養した細胞を膝関節内に注射する方法

治療の適応や方法は、膝関節の状態や体調などを踏まえて医師が判断します。

再生医療を選ぶ際に費用・保険適用・通院回数を事前に確認すること

再生医療を検討する際には、費用・保険適用の有無・通院回数の3点を事前に確認しておくことが必要です。

費用

費用については、医療機関や治療方法によって異なり、初診料や検査費用が別途必要になる場合もあります。

保険適用の有無

保険適用の有無は、受診前に必ず確認しておきましょう。再生医療の中には保険診療として行われる治療もあります。しかし変形性膝関節症に対する脂肪由来幹細胞治療やPRP療法、APS療法は現時点では自由診療となるケースが多くみられます。

通院回数

通院回数については、治療の種類や症状の状態によって異なります。治療は数回の来院で行われる場合がありますが、その後に経過確認のための診察が行われることもあります。医療機関によっては、治療後1か月、3か月、6か月などの時期に経過確認を行う場合もあります。

症状の進行度に応じた治療の選び方と受診の流れ

変形性膝関節症では、膝関節の状態や症状の程度に応じて検討される治療方法が変わる場合があります。あらかじめ治療の流れを知っておくと、受診前の不安を減らすことにつながります。

また、日常生活への影響の程度も受診を考える際の目安になるでしょう。

手術を検討する目安となる症状と状態

変形性膝関節症では、一定期間保存療法を続けても日常生活への影響が続く場合に、手術が検討される場合があります。

期間の目安として、数か月程度の経過をみることがあるとされています。たとえば、次のような状態が続く場合には、担当医と今後の治療について相談する機会となることがあります。

手術検討の目安となる症状
  • 安静にしているときや夜間にも膝の痛みを感じる
  • 歩行が難しくなり、日常の移動に支障が出ている
  • 階段の昇り降りや立ち座りが自力では難しい

手術方法には関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などがあり、年齢、膝関節の変形の程度、日常生活での活動量などを踏まえて医師が判断します。

初期・中期・末期それぞれで検討されることがある治療方法

変形性膝関節症の重症度は、画像検査などをもとにKellgren-Lawrence分類(グレード0〜4)で評価されることがあります。

初期(グレード1〜2程度)

日常生活への影響は比較的少なく、動き始めや長時間歩いた後に膝の痛みを感じる場合があります。

湿布や内服薬などの薬物療法、ヒアルロン酸注射、太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛える運動療法、インソールなどの装具療法が検討されることがあります。体重管理についても医師から助言が行われる場合があります。

中期(グレード3程度)

歩行時の痛みが強くなり、階段の昇り降りに負担を感じる場合があります。

保存療法を継続しながら症状の経過を確認します。医療機関によっては、PRP療法やAPS療法などの再生医療について説明が行われることもあります。

末期(グレード4程度)

安静時や夜間にも痛みを感じる場合があり、膝関節の変形が目立つケースがあります。

この段階では、人工膝関節置換術などの手術について説明が行われる場合があります。手術を希望しない場合や全身状態などの理由で手術が難しい場合には、医療機関によっては再生医療の相談が行われることもあります。

治療方法の選択は、症状の程度、年齢、生活環境などによって異なります。どの段階でも、担当医と相談しながら検討することが大切です。