首が痛いと、「首を回すたびに引っかかる」「後ろがズキズキする」「上を向けない」と、不安や疑問が次々に浮かんでくるものです。ご自身のことだけでなく、親御さんやご家族の首の痛みを心配して調べている方もいらっしゃるかもしれません。
首には、頭を支える筋肉や骨(頚椎)・神経・血管・リンパ節が集まっています。そのぶん、痛みの原因も筋肉の疲れから頚椎の変化・まれに脳や内臓の病気まで幅広く、「どこが」「どんな動きで」「どんなふうに」痛むのかによって、考えられる原因が変わってきます。
首の痛みの多くは、筋肉のこりや姿勢の乱れによる比較的軽いものです。ただし、中にはすぐに受診したほうがよい病気が隠れていることもあります。だからこそ、対処を始める前に、まず原因を見極めることが大切です。遠回りに見えても、それがいちばん安全な進め方といえます。自分でできる対処法や治し方は、後半の「自分でできる首の痛みの和らげ方」で紹介します。受診の目安は「首が痛いときに受診する目安と何科」で確認してください。まずは、痛む場所や症状から原因を整理していきましょう。
この記事では、首が痛い原因を、痛む場所や首の後ろの症状、動きや痛み方の違いから整理します。見逃せない病気や受診の目安、自分でできる対処法、医療機関での検査と治療も、順に解説します。ご自身やご家族の首と向き合うための参考にしてください。
首が痛いときにまず確かめたい痛む場所と痛み方

首が痛いといっても、痛む場所や痛くなったタイミング・痛み方によって、考えられる原因はさまざまです。首が痛い原因の多くは筋肉や姿勢による負担ですが、痛む場所や動き・痛み方を手がかりにすると、原因の見当をつけやすくなります。 まずは、首の前側や横・両側に起こる痛みから見ていきましょう。
首の後ろが痛い場合は、次章「首の後ろが痛いときに考えられる原因」で位置別にくわしく取り上げます。この章では、前側や横・両側の痛みと、動きや痛み方から原因を絞る手がかりを整理します。
首の前側や横・両側など後ろ以外に多い首の痛みの原因
首の前側が痛むときは、のどの奥やその周囲にある筋肉・リンパ節・甲状腺などが関係していることがあります。横(側面)が痛む場合は、首を傾けたり支えたりする胸鎖乳突筋や肩へつながる筋肉の張りが原因になりやすく、寝方や長時間のうつむき姿勢のあとに感じることも少なくありません。
右側だけ・左側だけと片側が痛むときは、その側に負担が偏るくせや、かばんをいつも同じ肩にかける習慣などが背景にあることがあります。両側がまんべんなく痛む場合は、姿勢の乱れや全身の疲れが関係していることが多いといえます。ただし、片側の痛みでも、後述するしびれや発熱をともなうときは別の原因が隠れていることもあるため、場所だけで決めつけないことが大切です。

首を回すと痛い・上を向けないなど動きで強まる首の痛み
首を回すと痛い・振り向けない・上を向けない・下を向くとつらいなど、特定の動きで痛みが強まるときは、その動作にかかわる筋肉や関節に負担が集中していると考えられます。とくに寝起きに急に動かせなくなった場合は、いわゆる寝違えが疑われます。
動きで痛む範囲が狭く、少しずつ動かせる範囲が広がっていくようであれば、筋肉のこわばりによる一時的なものが多いものです。反対に、動かすたびに電気が走るように痛む・腕にしびれが広がる・力が入りにくいといった場合は、神経がかかわっている可能性があります。無理に動かして確かめようとせず、痛みの出ない範囲にとどめておきましょう。
ズキズキや鈍痛など首の痛みの質感の違い
痛みの感じ方は人によってさまざまで、原因を考える手がかりのひとつになります。ズキズキと脈打つように痛むのか、重くだるい鈍痛なのか、ピリッと電気が走るのかによって、関係しやすい組織が異なります。次の一覧は、あくまで原因を考える手がかりであり、痛み方だけで原因を特定できるものではありません。自分の痛みがどのタイプに近いかを見るときの参考にしてください。
| 痛み方の感覚 | 関係しやすい組織や状態 |
|---|---|
| ズキズキ・脈打つ | 筋肉の炎症や血流の変化・緊張型の頭痛をともなうこり |
| 重い・鈍く張る | 筋肉のこわばりや姿勢の乱れによる慢性的な負担 |
| 電気が走る・ビリビリする | 神経の圧迫や刺激による放散した痛み |
| 突っ張る・詰まった感じ | 筋膜や腱のこわばり・柔軟性の低下 |
痛み方は、原因を断定する材料にはなりません。同じ「ズキズキ」でも原因は一つとは限らず、痛む場所や動き・随伴する症状とあわせて考えることで、はじめて見当がつけやすくなります。強い痛みや、これまで経験したことのない痛みが急に出たときは、質感にかかわらず早めに相談しましょう。
首の後ろが痛いときに考えられる原因

首の痛みの中でも、首の後ろが痛いという相談は数多く寄せられます。首の後ろが痛いのは、頭を支える後ろ側の筋肉のこわばりが中心ですが、付け根や左右・押したときの痛みなど、出方によって考えられる原因が変わってきます。 ここでは後ろ側に絞って、原因を整理していきます。首の後ろの温め方や寝るときの工夫といった具体的な対処は、後半の「自分でできる首の痛みの和らげ方」でまとめて取り上げます。
首の後ろには、頭と首の境目にある後頭下筋群や、首から肩へ広がる僧帽筋・頭板状筋などの筋肉が集まっています。頭の重さを受け止める負担が集中しやすいぶん、後ろ側はこりや痛みの出やすい部位です。

首の後ろの付け根から頭の付け根・後頭部にかけて起こる痛みの原因
首の後ろの付け根や、頭の付け根・後頭部にかけて痛むときは、後頭下筋群や僧帽筋の上部が疲れてこわばっていることがよくあります。スマホやパソコンを見るうつむき姿勢が続くと、これらの筋肉に負担がかかり、付け根から後頭部へと広がる痛みや重さとして感じられます。
こうしたこりが強まると、後頭部の締めつけられるような頭痛(緊張型頭痛)をともなうこともあります。多くは姿勢や疲れによる筋肉性のものですが、後頭部が突然激しく痛む・これまでにない痛みが急に出たといった場合は、後の「首の痛みに隠れた見逃せない病気」で触れる危険なサインのことがあります。ふだんの張りとは様子が違うと感じたら、我慢せず確認しておきましょう。
首の後ろの右側や左側・真ん中で異なる原因
首の後ろでも、右側だけ・左側だけ・真ん中と、痛む位置によって関係する筋肉や負担のかかり方が変わります。右後ろ・左後ろのように片側が痛むときは、寝方のくせや、片側に頭が傾く姿勢で一方の筋肉に負担が偏っていることが考えられます。真ん中(背骨に近い部分)が痛むときは、頚椎とそれを支える筋肉や靭帯への負担が関係することがあります。
ただし、痛む場所だけで原因を特定することはできません。いつから痛むのか、動作で悪化するのか、しびれや発熱をともなうのかによって、考えられる原因は変わります。痛む位置は手がかりのひとつと考えましょう。過去に同じ部位をけがしていないか(外傷歴)も、原因を見極める手がかりになります。
後ろに倒せない・押すと痛いなど首の後ろに強く出る痛み
首を後ろに倒せない・上を向くと後ろが詰まる・押すと痛いといった症状は、後ろ側の筋肉や、頚椎まわりの組織に炎症や強い張りがあるときに出やすくなります。後屈(後ろに反らす動き)で痛みが強まるのは、後ろ側の筋肉や関節が縮こまる方向に動くためです。
押すと痛い部分(圧痛点)がはっきりしている場合は、その周辺の筋肉のこわばりが痛みの中心になっていることが多いものです。一方で、押した痛みに加えて腕へのしびれや、じっとしていても強く痛む・発熱をともなうといった変化があるときは、筋肉以外の原因も考える必要があります。首の後ろを温めるとよいのか冷やすとよいのかは、急な痛みか慢性的なこわばりかで異なるため、後半の対処法の章もあわせて参考にしてください。
首が痛い原因に多い筋肉のこりと姿勢の乱れ

首の痛みで受診する方の多くは、筋肉のこりや姿勢の乱れが背景にあります。首が痛い原因としてよくみられるのは、デスクワークやスマホ姿勢で首の筋肉がこわばる「こり」と、それを招く姿勢の乱れです。 ここでは、日常生活の中で首に負担がかかる仕組みを見ていきます。
頭の重さは成人でおよそ5〜6kgあり、首の筋肉はその重さを一日中支えています。姿勢が崩れて頭が前に出るほど、首の後ろの筋肉にかかる負担は大きくなり、こりや痛みが起こりやすくなります。

デスクワークやスマホ姿勢で首の筋肉がこわばる原因
長時間のデスクワークやスマホの操作では、画面をのぞき込むうつむき姿勢が続き、首の筋肉が緊張したままになります。同じ姿勢が続くと、首の筋肉の緊張がとれにくくなり、こわばりや重い痛みとして感じられます。
参考:スマホの使い過ぎで首の痛みのリスクが2.3倍|Postgrad Med J
こうした負担は、日常のさまざまな場面で起こります。長時間の運転や在宅ワーク・慣れない筋トレ・楽器の演奏など、首を一定の角度で保つ動作が続くと同じようにこりが出やすくなります。また、低気圧や寒さで筋肉が緊張したり血流が悪くなったりする時期にも、痛みを感じやすくなる方がいます。まずはこまめに姿勢を変え、首や肩を軽く動かして血流を保つことが、こりの予防につながります。
枕や寝方が合わずに起こる寝違え
朝起きたときに首が痛くて動かせない寝違えは、睡眠中に首が不自然な角度で固定され、筋肉や関節に負担がかかって起こると考えられています。ただし、寝違えの原因は枕や寝方だけではありません。前日の首の使いすぎや疲労・冷え・飲酒後の深い眠りなど、複数の要因が重なって起こることが多いものです。
合わない枕は原因のひとつではあるものの、枕を変えれば防げるとは限らない点には注意が必要です。寝違えの多くは数日で和らいでいきますが、痛みが強い直後に無理なストレッチやマッサージをすると、かえって悪化することがあります。寝違えを繰り返す方や、なかなか治まらない方は、寝違えを繰り返すときの原因と対処もあわせて参考にしてください。
ストレスや自律神経の乱れで強まる首こり
首こりは、姿勢や疲れだけでなく、ストレスや自律神経の働きとも関係するといわれています。緊張やストレスが続くと、無意識に肩や首に力が入り、筋肉が緊張したままになりやすくなります。血流が滞ることで、こりや痛みが強まることもあります。
ただし、首こりを自律神経の乱れだけで説明できるわけではありません。姿勢・運動不足・睡眠・目の疲れなど、さまざまな要因が重なって起こるのが実際のところです。ストレスとの関連が気になる場合でも、まずは姿勢や休息・軽い運動といった整えやすいところから見直すとよいでしょう。首から肩にかけての広いこりが続くときは、肩こりと首こりが同時につらいときの考え方も参考になります。
首の痛みの背景にある頚椎や神経の疾患

こりや姿勢の負担が長く続くとき、そこに頚椎や神経の変化がかかわっていることもあります。首の痛みの中には、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニア・ストレートネックなど、頚椎や神経に関係する疾患が背景にあるものもあります。 ここでは代表的なものを整理しておきましょう。
これらは自己判断で見分けるのが難しく、画像検査で初めて分かることも少なくありません。当てはまりそうなときは、受診の判断材料にしてください。

頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアによる神経の圧迫
頚椎症は、加齢などで頚椎の骨や椎間板が変化し、神経の通り道が狭くなる状態です。頚椎椎間板ヘルニアは、椎間板の一部が飛び出して神経を圧迫するもので、どちらも首の痛みに加えて、腕や手のしびれ・力の入りにくさをともなうことがあります。
神経が圧迫されると、首だけでなく、その神経がつながる肩・腕・指先にまで症状が広がるのが特徴です。ボタンがかけにくい・箸が使いにくいといった手の細かな動作のしにくさが出る場合は、早めの受診が望まれます。頚椎の疾患については、頚椎症や頚椎ヘルニアで首や腕がつらいときの考え方もあわせてご覧ください。
参考:軽症の頚髄症は5年で約4分の1が悪化する|Spine J
ストレートネックやスマホ首が首にかける負担
本来ゆるやかにカーブしている頚椎が、まっすぐに近い状態になったものをストレートネック(スマホ首)と呼びます。うつむき姿勢との関連が指摘されており、カーブが減ることで頭の重さを受け止めるクッションの働きが弱まり、首の後ろの筋肉に負担が集中しやすくなると考えられています。
ストレートネックそのものは病名というより首の状態を指す言葉で、こりや痛み・頭痛の一因になることがあります。ただし、画像上でカーブが少ないというだけで、それが首の痛みの原因と断定できるわけではありません。姿勢の見直しやストレッチで負担を減らせる場合が多いものの、しびれをともなうときは頚椎の疾患が隠れていることもあります。姿勢と痛みの関係が気になる方は、ストレートネックで首がつらいときの姿勢の整え方も参考にしてください。
むちうちなど外傷で起こる首の痛み
交通事故やスポーツ・転倒などで首に急な力が加わると、筋肉や靭帯・関節が傷つき、むちうち(頚椎捻挫)と呼ばれる状態になることがあります。受傷直後は痛みが軽くても、翌日以降に首の痛みや張り・頭痛・めまいが強まることがあるのが特徴です。
外傷のあとの首の痛みは、自己判断で様子を見ず、まず整形外科で状態を確認してもらうことが大切です。とくに、手や足のしびれ・力が入らない・強い頭痛や吐き気をともなうときは、早めの受診が必要です。事故後の痛みが長引くときは、むちうちの痛みが続くときの考え方もあわせてお読みください。
首の痛みに隠れた見逃せない病気

首の痛みのほとんどは筋肉や頚椎によるものですが、中にはすぐに対応が必要な病気が隠れていることもあります。首の痛みの中でも、突然の激しい痛みや高熱・麻痺やしびれをともなうものは、緊急性の高いサインのことがあります。 この章では、緊急度に濃淡をつけながら、注意したい病気を整理します。
大切なのは、すべてを同じ重さで怖がるのではなく、緊急度の差を知っておくことです。次のような3段階を目安にすると、落ち着いて行動しやすくなります。
| 緊急度の目安 | 主な状況 | 行動の目安 |
|---|---|---|
| 救急(ためらわず) | 突然の激しい頭痛・手足の麻痺・ろれつが回らない・高熱と激しい頭痛で首が硬い | 救急要請や救急外来を検討 |
| 当日中 | 高熱とのどの強い痛み・急に大きくなる腫れ・強い痛みで動かせない | その日のうちに受診 |
| 早めに相談 | 微熱や軽い腫れが続く・原因のはっきりしない痛みが続く | 数日を目安に受診を検討 |
脳梗塞やくも膜下出血で首の後ろが痛いとき
首の後ろが痛いからといって、脳卒中の前兆であるとは限りません。首の後ろの痛みは、その大半が筋肉のこわばりによるものです。ただし、ごくまれに脳の血管の病気が痛みとしてあらわれることがあり、その見分け方を知っておくことは役に立ちます。
脳梗塞は、脳の血管が詰まって起こる病気で、首の痛みそのものよりも、突然の手足の麻痺・ろれつが回らない・言葉が出ない・片方の視野が欠けるといった症状が急に出るのが特徴です。これらは首の痛みの有無にかかわらず、すぐに救急対応が必要なサインです。
くも膜下出血は、脳の血管が破れて起こる病気で、これまで経験したことのない突然の激しい頭痛が代表的なサインです。後頭部から首の後ろにかけて、バットで殴られたような痛みが一瞬で最大になるように起こることがあります。後頭部の激痛や、急に始まった激しい痛みは、筋肉のこりとは異なる「すぐ受診すべきサイン」として扱い、ためらわず救急の受診を検討してください。
参考:急性頭痛を救急で評価するための診療指針|Ann Emerg Med
発熱やのどの痛みを伴い首が痛む髄膜炎・扁桃炎
発熱をともなう首の痛みでとくに注意したいのが髄膜炎です。髄膜炎は、脳や脊髄を包む膜に炎症が起こる病気で、高熱・激しい頭痛・吐き気に加えて、首を前に曲げると強く痛んで曲げにくくなる(項部硬直)のが特徴です。これらがそろうときは緊急性が高く、救急の受診が必要です。
一方、扁桃炎など、のどの感染症にともなう首の痛みは、緊急度が一様ではありません。のどの強い痛みや高熱をともなう場合は、その日のうちに受診するのが目安です。ただし、髄膜炎かどうかをご家庭で見分けることは困難です。高熱と激しい頭痛があり、首を前に曲げられないほど硬い(項部硬直)・意識がぼんやりするといったときは、見分けようとせず、迷わず救急を頼ってください。
甲状腺やリンパの腫れなど首の痛みに関わる内臓の病気
首の前や横の痛みでは、甲状腺やリンパ節の病気が関係することがあります。甲状腺の炎症(亜急性甲状腺炎など)では、のどぼとけの下あたりが痛み、発熱をともなうことがあります。首のリンパ節は、かぜやのどの炎症のときに腫れて痛むことがあります。ただし、腫れやしこりの原因を、見た目だけで見分けることはできません。
急に腫れが大きくなる・熱をもつ・飲み込みや息がしにくい・高熱をともなうといった場合は、その日のうちの受診が望まれます。一方、痛みをともなわないしこりが少しずつ大きくなる・硬くて動きにくいといった変化があるときは、日数を待たず早めに医療機関で確認しておくと安心です。軽い腫れや痛みであっても、長引くときは自己判断で様子を見続けないようにしましょう。
首の痛みに頭痛やしびれが重なるとき

首の痛みは、頭痛やしびれなど別の症状と重なって出ることがあります。首の痛みに頭痛やめまい・腕のしびれが重なるときは、筋肉のこりによるものから神経がかかわるものまで幅があります。 どんな症状が重なっているかを整理しておきましょう。
重なる症状は、原因を絞り込む手がかりになると同時に、受診の緊急度を判断する材料にもなります。

首の痛みと同時に出る頭痛やめまい
首こりが強いと、後頭部を締めつけられるような緊張型頭痛をともなうことがあります。首まわりの筋肉がこわばり、頭全体が重く感じられるのが特徴です。首の動きにあわせてふらつくような軽いめまいが出ることもあります。ただし、めまいは耳や脳・循環器など、首以外の原因でも起こります。初めてのめまいや、繰り返すめまい、歩けないほど強いめまいのときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
一方で、突然の激しい頭痛や、経験したことのない痛み・手足の動かしにくさをともなう頭痛は、前章で触れた脳の病気のサインのことがあります。回転するような強いめまいや、吐き気・ろれつの回りにくさが重なるときも同様です。いつもの頭痛と違うと感じたら、様子を見ずに受診を検討しましょう。
首から肩や腕に広がるしびれを伴う首の痛み
首の痛みとともに、肩や腕・手指にしびれが広がるときは、頚椎から出る神経が圧迫されている可能性があります。神経の通り道が狭くなると、その神経が担当する範囲に沿って、しびれや痛み・力の入りにくさがあらわれます。特定の姿勢で症状が強まったり弱まったりするのも特徴のひとつです。
しびれが一時的で、姿勢を変えると和らぐ程度であれば、経過を見てよいこともあります。ただし、しびれが強く広がる・手に力が入らない・細かい作業がしにくいといった症状があるときは、神経の障害が進んでいるサインのことがあります。放置せず、整形外科で状態を確認してもらいましょう。
何日も治らない首の痛みが続くとき

首の痛みが何日も続くと、このまま様子を見てよいのか不安になるものです。首の痛みが治まる日数には個人差があり、日数はあくまで目安です。悪化や発熱・しびれをともなうときは、日数を待たずに受診することが大切です。 経過の見方を整理しておきましょう。
痛みが続く期間だけで原因を決めることはできませんが、およその経過を知っておくと、受診のタイミングを判断しやすくなります。

数日で治まる寝違えと1週間以上続く首の痛みの違い
首の痛みが続くとき、まず知っておきたいのは、悪化する・発熱やしびれをともなう・日常生活に支障が出るといった場合は、日数にかかわらず受診するということです。そのうえで、寝違えのような急な首の痛みは、多くが数日から1週間ほどで和らいでいきます。1週間はあくまで目安の一つで、動かせる範囲が少しずつ広がり、痛みが引いていくようであれば、筋肉性の一時的なものと考えてよいでしょう。この間は、痛みの強い動きを避けて無理をしないことが基本です。
一方で、1週間以上たっても痛みが引かない・かえって強くなる場合は、筋肉以外の原因も考える必要があります。ただし、日数だけで判断できる決まった基準があるわけではありません。1週間を待たずとも、外傷のあとの痛み・発熱やしびれをともなう痛み・日常生活に支障が出るほどの痛みがあるときは、その時点で受診を検討してください。
1ヶ月以上の慢性的な首の痛みで疑う原因
1ヶ月以上にわたって首の痛みが続く慢性的な状態では、姿勢や筋肉の負担が積み重なっていることに加えて、頚椎症などの頚椎の変化がかかわっていることもあります。痛みとこわばりを繰り返しながら、なかなかすっきりしないのが慢性的な首の痛みの特徴です。
慢性化した痛みは、セルフケアだけで解決しにくいことがあります。とくに、しびれや力の入りにくさをともなう・夜間や安静時にも痛む・だんだん悪化しているといった場合は、原因を調べる段階と考えて受診しましょう。生活に支障が出るほどの痛みを我慢し続ける必要はありません。
子供から更年期まで年代で変わる首の痛み

首の痛みは、年代や性別・その時期のライフステージによって、なりやすい背景が変わります。首が痛い原因は、子供や中高生・更年期や産後の女性など、年代とライフステージによって多いものが異なります。 自分や家族の状況に近いところを確認してみましょう。
同じ首の痛みでも、成長期の子供と、ホルモンの変化が大きい時期の大人とでは、考えられる原因が違います。
子供や中高生に起こる首の痛み
子供や中高生の首の痛みは、スマホやゲーム・勉強でのうつむき姿勢や、部活動でのスポーツによる負担が背景になることが多いものです。成長期は体の使い方が変わりやすく、姿勢のくせや筋肉の疲れから首や肩のこりを感じる子も増えています。
多くは姿勢や疲れによる一時的なものですが、発熱をともなって首を動かしにくい・強く痛がる・けがのあとに痛むといった場合は、感染症や外傷の可能性も考えて、小児科や整形外科で確認しましょう。子供は痛みをうまく言葉にできないこともあるため、動きや様子の変化に周囲が気づいてあげることが大切です。
更年期や産後の女性に多い首の痛み
女性では、更年期や産後など、ホルモンや生活リズムが大きく変わる時期に、首や肩の痛みを感じやすくなることがあります。更年期には、ホルモンの変化にともなって、こりや痛み・だるさが出やすくなります。一方、産後に負担となりやすいのは、授乳や抱っこによる長時間のうつむき姿勢です。産後は年代というよりライフステージの影響が大きく、年代とライフステージの両面から振り返ると、原因の見当をつけやすくなります。
こうした時期の痛みは、姿勢の工夫や休息・軽い運動で和らぐことが多いものです。ただし、痛みが強く続く・しびれや頭痛をともなう場合は、我慢せずに相談しましょう。
自分でできる首の痛みの和らげ方

原因の見当がついたら、日常でできる対処法も知っておきましょう。首が痛いときの治し方の基本は、危険なサインがないことを前提に、温めやストレッチ・寝方の工夫で負担をやわらげ、痛みが強いときは無理をしないことです。 ここでは、自分でできるケアと注意点をまとめます。先に触れた首の後ろの痛みや、寝るときの工夫についても、この章で具体的に取り上げます。
対処法は、あくまで筋肉性の軽い痛みをやわらげるための補助です。強い痛みやしびれ・発熱をともなうときは、セルフケアだけで対応しようとせず、原因に応じた受診を優先してください。
温めやストレッチで首の血行を促す方法
温めやストレッチを行えるのは、急な激しい痛みや発熱・しびれ、けがのあとといった危険なサインがない場合に限ります。この前提を満たすうえで、慢性的な首こりが筋肉の張りによるものなら、温めて血行を促したり、ゆっくりストレッチをしたりすることが役立ちます。蒸しタオルや入浴で首の後ろから肩を温めると、筋肉がほぐれやすくなります。ストレッチは、痛みの出ない範囲で首をゆっくり動かし、痛気持ちいいところで無理なく行いましょう。
寝違えた直後の強い痛みや、腫れ・熱をもっているとき・急に激しく痛みだしたときは、温めたり無理に伸ばしたりすると、かえって悪化することがあります。急性期はまず安静にし、慢性的なこわばりには温めとストレッチ、という使い分けを目安にしてください。ストレッチで痛みが強くなる場合は中止し、無理に続けないようにしましょう。
首の痛みに使う市販の痛み止めや湿布の選び方
市販の痛み止めや湿布は、首の痛みを一時的にやわらげる助けになります。飲み薬は炎症や痛みをおさえるタイプが一般的です。湿布の冷感タイプと温感タイプの違いは、主に貼ったときに皮膚で感じる使い心地によるもので、患部を実際に冷やしたり温めたりする処置とは別のものです。基本的には好みで選んでかまいませんが、どちらがよいか迷うときは薬剤師に相談すると安心です。
ただし、これらは症状をやわらげる対症的なケアであって、痛みの原因そのものを取り除くものではありません。市販薬を使っても痛みが続く・だんだん強くなる場合は、漫然と使い続けず整形外科を受診してください。持病があり薬を飲んでいる方や妊娠中の方は、念のため医師や薬剤師に相談してから使うと安心です。
首に負担をかけない枕と寝方
睡眠中の姿勢は、首の負担に大きくかかわります。高すぎる枕や低すぎる枕は、寝ている間に首を不自然な角度で固定し、こりや痛みの原因になることがあります。自分の体格に合った高さで、首のカーブを自然に支えてくれる枕を選ぶとよいでしょう。
参考:枕の選択で首の痛みや起床時の症状が変わる|Clin Biomech

あお向けで首と枕のすき間が大きくあかないか、横向きで背骨と首がまっすぐになるかを目安にすると選びやすくなります。
首の後ろが痛くて寝つきにくいときは、タオルを丸めて首の下に添え、高さを微調整する方法もあります。うつぶせ寝は首をひねった姿勢が長く続くため、首の痛みがあるときは避けたほうがよいでしょう。枕や寝方を工夫しても痛みが改善しない・朝の痛みが続く場合は、寝具以外の原因も考えて相談してみてください。
首が痛いときに受診する目安と何科

セルフケアで改善しないときや、気になる症状があるときは、医療機関の受診を考えましょう。首が痛いときは、まず整形外科が受診先の基本ですが、症状によっては別の診療科や救急が適していることもあります。 どこを受診すべきかを整理しておきましょう。
受診先に迷ったときは、症状の出方が手がかりになります。次の表を、受診先を選ぶときの目安にしてください。
| 症状のタイプ | 適した受診先の目安 |
|---|---|
| 首や肩のこり・慢性的な痛み・しびれ | 整形外科 |
| 高熱とのどの痛み・強い頭痛をともなう | 内科や救急(症状の強さで判断) |
| 突然の激しい頭痛・手足の麻痺・ろれつが回らない | 救急(ためらわず) |
整形外科や整骨院など首の痛みで受診する診療科
首の痛みで受診先に迷ったときは、まず整形外科が基本です。整形外科では、医師が問診や触診を行い、必要に応じて画像検査で頚椎や神経の状態を調べたうえで、原因に応じた治療方針を立てられます。検査の内容については、後半の「レントゲンやMRIで首の状態を調べる検査」でくわしく取り上げます。原因を確かめてから治療に進めるのが、医療機関を受診する大きな利点です。
整骨院や接骨院は、柔道整復師が施術を行う施設です。医療機関(病院・クリニック)ではなく施術所にあたり、医師による診断や画像検査は受けられません。そのため、原因のはっきりしない首の痛みや、しびれ・発熱をともなう痛みでは、まず整形外科を受診してください。整形外科で原因を確かめたうえで、こりや筋肉の緊張をほぐす目的で施術所を利用するという使い分けが安心です。
すぐ救急を受診すべき首の痛みの症状
首の痛みの中には、様子を見ずにすぐ救急を頼ったほうがよいものもあります。とくに、これまで経験したことのない突然の激しい頭痛や、手足の麻痺・ろれつが回らない・言葉が出ないといった症状は、脳の病気のサインのことがあり、一刻を争います。
- 突然の激しい頭痛が一瞬で最大になる
- 手足の麻痺・しびれ・ろれつが回らない・言葉が出にくい
- 高熱と激しい頭痛があり、首を前に曲げられないほど硬い
- 事故やけがのあとで、強い痛みやしびれ・力の入りにくさがある
これらに当てはまるときは、迷わず救急要請や救急外来の受診を検討してください。判断に迷う場合でも、救急相談の窓口に問い合わせて指示を仰ぐ方法があります。過度に怖がる必要はありませんが、当てはまるサインがあるときは先延ばしにしないことが大切です。
首の痛みに医療機関で行う検査と治療

医療機関では、首の痛みの原因を確かめ、状態に応じた治療を行います。首の痛みの検査はレントゲンやMRIが中心で、治療は薬や注射・リハビリなどの保存療法から始めるのが一般的です。 受診したあとの流れをイメージしておきましょう。
参考:首の痛みに欧州の指針が勧める保存療法|Eur J Pain
どの検査や治療が必要かは、症状や原因によって異なります。医師の説明を受けながら、自分に合った方法を選んでいくことになります。
レントゲンやMRIで首の状態を調べる検査
整形外科では、まず問診や触診で痛む場所や動き・しびれの有無を確認し、必要に応じて画像検査を行います。レントゲンは骨の並びや頚椎の変形・すき間の狭まりを確認するのに向いています。MRIは、椎間板や神経・脊髄など、レントゲンには写りにくい軟らかい組織を詳しく調べられます。
- レントゲン:頚椎の骨の変形や並び・すき間の狭まりを確認する
- MRI:椎間板や神経・脊髄など軟らかい組織の状態を調べる
- 血液検査:感染や炎症・全身の病気が疑われるときに行う
これらを組み合わせることで、首の痛みの原因を多角的に見極められます。しびれや力の入りにくさがあるときは、神経の状態を調べるMRIが選ばれることが多いといえます。検査の結果によって、その後の治療の方針が立てやすくなります。
薬やブロック注射で首の痛みを抑える保存療法
首の痛みの治療は、手術をせずに行う保存療法が基本です。痛みや炎症をおさえる飲み薬や湿布・塗り薬に加え、痛みが強い場合には、神経や周囲に麻酔薬などを注射するブロック注射が用いられることもあります。これらは、つらい痛みをやわらげて日常生活を送りやすくする役割を担います。
参考:神経根症へのブロック注射は短期の痛みに有効|Neurology
ただし、治療は薬や注射だけではありません。姿勢や動作を見直し、首を支える筋力や柔軟性を整えるリハビリ(運動療法)も、慢性的な首の痛みには欠かせない柱です。牽引や物理療法が行われることもあります。保存療法を続けても神経の圧迫による症状が強い場合などには、手術が検討されることもあります。どの治療が適しているかは原因や重症度によって異なるため、医師と相談しながら進めていきましょう。
参考:慢性の首の痛みには筋力トレーニングが有効|Cochrane
慢性的な首の痛みに対する再生医療という選択肢

保存療法を続けても首の痛みがなかなか改善しないとき、次の選択肢を探している方もいるかもしれません。慢性的な首の痛みのうち、器質的な組織の変化による痛みに対しては、保存療法に加えて再生医療という選択肢が検討されることがあります。 ここでは、その位置づけと限界を整理します。
再生医療は、自分の血液や細胞を用いて、傷んだ組織の修復をめざすアプローチです。首の領域では、頚椎症や椎間板の変化など、器質的な原因による慢性的な痛みが対象として検討されます。薬やブロック注射といった対症療法が中心の保存療法に対して、痛みの背景にある組織にはたらきかけることをめざす点が異なります。
- PRP療法:自分の血液から取り出した成分を用い、炎症の抑制や組織の修復をうながすことをめざす治療
- 幹細胞治療:組織の修復力に着目し、痛みの軽減や機能の改善をめざす治療
ただし、すべての首の痛みが再生医療の対象になるわけではありません。対象として検討されるのは主に器質的な変化による慢性的な痛みで、筋肉性の一時的な痛みや、脳・内臓の病気による痛みは対象になりません。また、首の領域での再生医療は、手術や薬・リハビリといった標準治療に置きかわるものではなく、その位置づけや効果は治療や製品によって異なります。効果には個人差があり、公的医療保険の対象外となる自由診療のため、費用や適応の判断は医師の診察が前提です。再生医療等の提供計画を国に届け出ている医療機関を選ぶことも、検討する際の目安になります。保存療法の限界を感じたときは、選択肢のひとつとして当院の再生医療についても医師に相談してみてください。
首が痛いときによくある質問

最後に、首の痛みについてよく寄せられる質問に簡潔にお答えします。くわしい内容は、各章の解説もあわせて参考にしてください。
首が痛いのは何が原因ですか
首の痛みでよくみられるのは、デスクワークやスマホ姿勢による筋肉のこりと、姿勢の乱れです。そのほか、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアといった頚椎の疾患、寝違えやむちうちなどの外傷が原因になることもあります。まれに、脳や内臓の病気が首の痛みとしてあらわれることもあるため、突然の激しい痛みや発熱・しびれをともなうときは注意が必要です。痛む場所や動き・痛み方から、原因の見当をつけていきましょう。
首が痛いのは何日くらいで治りますか
寝違えのような筋肉性の急な痛みなら、数日から1週間ほどで和らいでいくことが多いとされています。ただし、原因や程度には個人差があり、回復までの期間を一律に決めることはできません。1週間以上たっても引かない・かえって強くなる、あるいは発熱やしびれ・生活への支障をともなう場合は、日数を待たずに整形外科で原因を確認しましょう。
首が痛いときは何科を受診すればよいですか
首の痛みは、まず整形外科が受診先の基本です。整形外科では、問診や触診に加えてレントゲンやMRIで頚椎や神経の状態を調べられます。高熱とのどの痛みをともなうときは内科、突然の激しい頭痛や手足の麻痺をともなうときは救急というように、症状によって受診先を選び分けると判断しやすくなります。迷うときは、まず整形外科で相談し、必要に応じて紹介してもらう流れでも問題ありません。
首の痛みは脳梗塞の前兆ですか
首の痛みだけをもって、脳梗塞の前兆と考える必要はありません。脳梗塞は、首の痛みよりも、突然の手足の麻痺・ろれつが回らない・言葉が出ない・片方の視野が欠けるといった症状が急にあらわれるのが特徴です。首の痛みにこうした症状が重なるときや、これまで経験したことのない突然の激しい頭痛をともなうときは、脳の病気のサインのことがあるため、ためらわず救急の受診を検討してください。多くの首の痛みは筋肉や頚椎によるものですが、いつもと違う症状が重なるときの見極めが大切です。
